#entry-94 リノベーション オリエントホテル高知

異文化が同居する高知らしい「オリエントホテル」へと…

何度か現場をともにしてきた設計士からの依頼で…

今回ご紹介するのは、高知県の県庁前にある「オリエントホテル」の改修工事。何度か一緒に仕事をしてきた、神奈川在住の設計士からの依頼でホテルの改修工事は始まりました。


今までのホテルのイメージから
雰囲気をガラッと変えたい…

ホテルからの依頼は、エントランスから入ってすぐのフロントや1階のフリースペースを、「今までのホテルのイメージから雰囲気をガラッと変えたい」というものでした。そして、ホテル側からのオーダーをより具体化するために、設計士との入念なプランニングが始まりました。

ホテル側が叶えたい3つのこと

①異文化が合わさったような高知らしさを表現したい
②いつでも立ち寄ってもらえるオープンな空間にしたい
③カウンターバーをフロントに変更し導線の不具合を改善したい

しかし、鉄筋コンクリートや鉄骨を使った商業施設。想定不能な事態が次々と起こり、常にハラハラドキドキ。改修工事は瞬時の判断力と決断力が求められる、大掛かりなものになっていったのです。


人と人とのコミュニケーションが生まれるオープンな異文化空間へ…


ホテル側の理想を叶えるためにプランされたのは、細部にまで高知らしさを散りばめた古くて新しい空間。観光客のみならず、県民までもが待ち合わせに利用しやすいような、自然に人が集い語らう場所を目指して改修工事は始まりました。



営業中のなか、予測不能な事態が次々と…

ホテルの要望を叶えるため、キッチリとした印象の天井を除けて、あえてコンクリートの構造体を魅せる手法で空間に崩し感を取り入れることにしたのですが、 ホテルが営業を行うなか施工をしなければならず工事は難航。いざ施工が始まってみると想定外の問題が次から次へと勃発します。創業何十年も経過しているホテルです。当時の建築現場を把握する人間は一人としておらず…

ホテルの何百という配線に悩まされて

解体してみないと天井裏や壁の中がどうなっているかさえわからない予測不能な状態。天井裏や壁の中を、無数の配線・配管が縦横無尽に巡り、新しい間取りにそった配線を組み替えるだけでも至難の業。ホテルの何百という配線を処理して分電盤を移動していくのですが、ホテルは営業中のため、電気が止まると一大事になりかねないためヒヤヒヤです。


業者同士が一丸となって一箇所一箇所、慎重に難題をクリア!


また、非常に時間と予算、リスクを伴うため、施工方法を即座に考えて進めなくてはならず、決断力と判断力が必要とされる。そんな一瞬たりとも気を抜けない状況下、一箇所一箇所慎重に業者同士が一丸となって作業を進めました。今まで培ってきた業者間の人脈と信頼関係を120%フル活用することで、どうにかこうにか局面を乗り越えることができたのです。




“高知の職人臭さ”を随所に散りばめて高知らしさを演出

構造体のコンクリートをあえて魅せた天井、フロントの正面に取り付けたホテルのロゴ、土佐和紙職人の手仕事が光る照明や壁オブジェ、レトロな古建具など、随所で伝統と懐かしさを感じさせるものを使用して高知らしさを演出。“いい意味で“高知の職人臭さ”が漂う異文化空間になってったのではないかと思います。





たくさんの業者仲間とホテルスタッフの皆さんのバックアップにより無事完成!


普段は木材を使った施工を手掛けることが多いのですが、今回の改修は鉄筋コンクリートや鉄骨を使った商業施設。

従来のフロントがコンクリート造りだったため、解体ひとつとっても、ユンボーを入れて壊すなど、繊細な作業が必要な一方でコストもかかる大掛かりな工事となりました。

また、解体を始めた頃のホテルホールは壮絶な状態。ホテルの方もとても不安そうでしたが、皆さんの理解と協力があって、依頼通りの工期で無事完工し胸をなでおろしました。仕上がる過程とともに、ホテルスタッフの方々とも良い関係性が構築できたように思います。


溝渕建設の代表(右)と依頼主である建築士の拓哉さん(左)



今回は依頼主である設計士の拓哉くんからコメントをいただきました。


一苦労どころか二苦労も三苦労も…

この現場は予算とスケジュールがタイトで苦労の連続でした。かずさんと一緒でなければ、まとめることはできなかったと思います。解体して初めて分かることも多く、設計変更も非常に多かったため、タイトなスケジュール通りに収めることに一苦労どころか二苦労も三苦労も…



今回こだわったのは以下のような点です


①新たに塗装やシート貼りなどの仕上げを加えたい
②古材や古家具を積極的に活用し、時間を取り込む空間にしたい
③横長の空間全体をつなぐため、ネットワーク状に照明用ダクトレールを設置したい 
etc…


溝渕建設は業者泣かせな “工務店が嫌がる” 現場に強い!


どこまで既存のデザインを残していくか、限られた予算内のなかどうまとめていくか…、いくつもの課題をふまえて解体範囲やディテールの試行錯誤は続きました。そうやって私が頭をかかえている間も、かずさんは前向きに面白がりながら取り組んでくれます。







設計側がスムーズに進めるよう、道筋をつくってくれて頼りになる棟梁!

おかげで私は設計・デザインに集中することができた。設計面での新しいチャレンジは、得てして業者さん泣かせ。業者さんからは敬遠されがちです。しかし、施工面では難しく手間がかかる作業も、左官屋さん・塗装屋さん・クロス屋さんと連携し、スムーズに進める道筋をつくってくれる。他の大工さんだとそうはいきません。

高知の伝統文化も取り入れて…

今回はホテル側の「異文化が合わさったような高知らしさ」を表現するため、大工のかずさんをはじめ、和紙職人がつくった土佐和紙の照明を取り入れたり、フラフ職人に暖簾を染めてもらったり、たくさんの職人さんに協力をしていただきました。


醍醐味は一緒に建築を創り上げる達成感!

設計者と施工者が協力し合って一つの建築をつくりあげるという達成感を感じられるところが、かずさんと一緒に仕事をする何より醍醐味です。高知で良い空間を一つでも多く作っていくために、また一緒に仕事ができたらうれしいです。


(※)かずさんとは … 溝渕建設の代表であり、大工の棟梁


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